指 導 理 念

1)現在の指導環境とは

プロのバスケットボールチームが誕生し、徐々に盛り上がりを見せてきている我が栃木県のバスケットボール界ではありますが、子供達が指導を受けている環境は決して恵まれているものではありません。特に小学生のミニバスケット界では我々大人の熱意が病的にこう進し、行き過ぎた指導が行われているケースを多く見かけます。

我々大人の目標達成への熱意が病的にこう進すればするほど、あらゆる条件を無視し、様々な配慮を怠って目的に向かって直進的に進もうとしてしまう傾向があります。「勝つことが全てだ!」というゆとりのない指導は、子供達の心と身体にひずみを生み、燃え尽き症候群の予備軍を作ります。これでは心身の健全な育成や人格形成、さらには人間的な信頼関係が希薄になってしまいます。
また多くのスポーツ指導の現場では、大人の物差しで直ぐに結果を求め専門的な技術だけを早く覚えさせようとする傾向が強いように思います。試合に勝つことだけを考えその為の技術系指導ばかりをしていると基礎体力が伴わない上辺だけの技術しか身に付きません。

基礎体力が伴わない未熟な選手は15〜16歳でピークを迎え、息の長い選手生命を送ることが出来なくなってしまいます。 スキャモンの発育発達曲線によれば9〜12歳のゴールデンエイジといわれる年代は神経系の発達が完了する時期だと言われています。この時期の運動体験によって築かれた豊富な神経ネットワーク上にしか優秀な運動センスは身に付きません。
運動センスを身に付けるためにはこの時期の運動体験がとても重要です。センスを磨き、強い体を作り、正しい体の使い方を身に付け、考え方を学ぶ。この1つ1つの土台造りを確実に行っていくことが、子供達の可能性を最大限に引き出す力になるのです。


2)これからの指導環境とは

一般に、スポーツ選手を見て「あの選手は身のこなしが良く、運動神経が優れている」とか、「状況判断が良い」「センスが良い」といった表現をします。実際に子供達の動きに目を移しても、バランスをとるのが上手い子、リズムに合わせて身体を動かす事が得意な子、ボールへの反応が早い子などがいます。もちろん、この時期の子供の成長に個人差があるのは当然ですが、ではこの個人差は何なのでしょうか?
私は、その状況や情報を目や耳など五感で察知し、それを頭で判断し、具体的に筋肉を動かすといった一連の過程をスムースに行う能力(=コーディネーション能力)の差であると考えています。

小学生のこの時期は、神経系が著しく発達し、脳をはじめとして体内に様々な神経が張り巡らされていく大事な時期です。この時期にどんな体験をするかによって神経系の発達は変化し、運動能力やコーディネーション能力の個人差となって現れてきます。第一線で活躍する競技者には、このコーディネーション能力が高い人が多く、彼ら・彼女らは子供の頃に人一倍様々な遊びを体験している事が指摘されています。

これからは子供達の発育発達を考慮し長期的な展望に立ち、ゆとりある指導でスポーツ好きな子供達を増やす取り組みが必要です。
小学生には神経系の要因の多いトレーニングを取り入れて多面的な基礎づくりを行い、まずは「スポーツは楽しい」という体験をさせてあげること。次に子供達が指導者に押付けられてプレーするのではなく、しっかり自分で考え、判断し、変化できる力を身に付けさせてあげることが大切です。そのため指導内容に遊びの要素を多く含め自由度を増やす事で、出来るだけ本人の判断に委ねる部分を増やしていきたいと考えています。
バスケットボールの練習メニューに神経系を発達させるメニュー、正しい体の使い方を学ぶメニュー等を加えることで「センスの育成・障害の予防・パフォーマンスアップ」を実現させていきます。

目や耳からの情報を子供達自身で判断し行動する。もし結果が悪い方に出た場合でもその失敗は次につながる失敗となるはずです。身体を使い、頭を使い、目一杯楽しみながら『心技体』全ての面でバランス良く成長していって欲しいと思っています。


3)指導方針

栃木県の中高校生は、身長や運動能力に頼った個人プレーが目立ちます。
県内では通用しても県外のより高いレベルの選手と対戦した時、その選手は何も出来ない選手へと変わってしまいます。そうならない為にも今のうちから対戦相手を意識した動き方やチームとしての考え方も身に付けていく必要があるでしょう。でも小学生のスポーツとは、これから10年、20年と続けていく競技人生の為の大切な準備期間であると考えています。

競技スポーツにおいて「勝たなきゃ意味が無い」とか「勝たなきゃ面白くない」とおっしゃる方も多数いらっしゃいますが、私はそうは思っておりません。自分自身の競技経験からも、勝ってもつまらない試合はあるし負けても充実感たっぷりの試合はあると実感しています。
喜び(楽しさ)とは成長・進化と共にあるものです。目標としてきた事が達成された時もされなかった時もその結果いかんに係わらず、自分の、もしくはチームの成長・進化を実感できることが1番の喜びです。勝つ事にこだわるよりも、常に目標を持って格上のチームにチャレンジしていく強い気持ちを育んでいきたい。お互いの失敗を非難しあうよりもお互いのチャレンジを称えあう人間関係を育てていきたいと思っています。
「しっかりとしたプロセスを踏んでいけば結果は後からついてくるもの」これが私の信念です。

指導の目標は「子供達に愛着心を持ってもらうこと、そういう人材に育てること」です。
子供達が石橋に生まれて良かった、バスケットをやって良かったと思えるような環境作りを目指して活動していきます。
子供達はみな純粋で、我々大人の間違った指導にも素直に従ってくれます。だからこそ私達大人はスポーツや身体運動についての正しい知識・情報・技術を身に付け、指導に関わっていかなければならないと考えています。

私は医療従事者としての知識、専門的なトレーニング知識を自分自身の競技経験に加えて、子供達により分かり易く簡単に伝えていく事が出来ます。子供達が笑顔で健やかに、そしてたくましく成長していけるように子供達の様子を観察しながら指導をしていきます。